「おい、志村、近藤が死ぬ前にやめてやってくれ」
 背後から低い声がして、振り向くと、土方が心底嫌そうな顔で派手にため息をつきながら立っていた。
「なんで止めるのよ!!!こんな変態、消えた方が世界のためよ!!」
「いや、そんな奴でもな、俺のダチなんだよ」
「知るかぁ!!!とりあえず、てめぇの下半身のリコーダーは世界平和のため、私がぐっちょんぐっちょんのねっちょんねっちょんにしておいてやる」
 撃沈してぶっ倒れた近藤をよそに、志村が立ち上がり、近藤の股間を踏みつける。
「ぐぇっっ!!!ひゃ、ひゃめて〜ひぬ〜」
 パンパンに腫れ上がった顔で、近藤は命乞いをするが、まともな言葉にならない。
「なんだって?」
「きゃ〜やめて〜。オカマになる〜。オカマゴリラになる〜。志村の仲間になる〜。体育の時、志村と一緒に着替えられていいかもなぁ。げへへへへ〜」
 俺は面白がって野次を飛ばす。
「死ねゴリラ!!!」
「沖田、面白がって火に油そぞぐな!!!」
 ゴンと頭を殴られた。いてぇ!!! 志村の肩を押して、近藤からどけて、近藤の腕を引っ張り、起き上がらせ、腕を自分の肩にかける。
「志村、リコーダー盗んだ件に関しては、悪かったな。後で弁償させるからよ。
 でも、近藤は、馬鹿だから、沖田と違って、そんな深いことまで考えてねーよ。好きな奴のものが欲しかっただけなんだ。どーいう訳か、こいつはお前のことが好きらしいからよ」
「欲しかっただけだ〜?絶対、舐めるに決まってんじゃん!!!いや、すでに舐めた。舐めなかったとは言わせねぇ!!!」
 殴られたのがむかついたから、とりあえず突っ込みを入れる。
「話がややこしくなるから、てめぇは黙ってろぃ!!!」
 思いっきり怒鳴られた。
「とりあえず、笛は弁償させっからよ。これで勘弁してやってくれ」
 そう言って、肩に近藤をかついで、教室を出て行く。多分、保健室に向かうのだろう。仕方ない、と言いながら。