あぁ、なんでこんなに眠いんだろ?
 寝ても寝ても寝たりねぇ。成長期だからだろうか?

 六時間目にあるLHR(ロングホームルーム)なんか、寝るために用意されたようなもんよ。

 もちろん、LHRで何が話し合われていたかなんて爆睡していた俺は知らない。
 多分、近くなった体育祭か、学園祭か、まぁどっちかの話だろ。
 たまに寝てたからという理由で、つまんない委員会の役員を押し付けられることもある。
 でも、このキョーレツな眠気の誘惑には勝てない。


 ある日、いつものように机に突っ伏して寝ていると、
「沖田く〜ん、衣装持ってきたよ〜」
 と女子に取り囲まれた。

「衣装?」
 俺は寝起きで何のことか分からず、間抜けな声をあげる。
「この間、HRで決まったじゃん。学園祭で、仮装して喫茶店やるって。その衣装」
「HR?寝てたから知らねぇや」
 俺はあくびしながら答える。
「知らなくても決まったのよ。その場で意見を言わなかった人に、拒否する権利はないのよ?」
 出た。クラスを姉御肌で仕切る俺の苦手なゴリラ女、志村妙だ。嫌味なまでの作り笑顔だ。まったくこの女、いけすかねぇ。
「沖田くん、帰りのHRが終わると、準備も手伝わずに速攻で帰るから知らなかっただろうけど。みんな、学園祭の準備、頑張ってきたの。三日後なのよ?」
「ふーん」
 俺は全く興味なく、適当に帰る準備をしながら相槌を打った。
「沖田くんは、準備手伝わなかった分、当日はきっちりコレを着て働いてもらうから」
 志村が手元の袋をゴソゴソと探る。そして取り出して、俺に向かってバーンと広げてみせる。
「ね、カワイイでしょ?」
 それは、女子のセーラー服だった。
「……………」
 俺はしばらく思考停止した後、これは夢だともう一度机に突っ伏す。
「人の話の最中に寝るんじゃねぇ〜!!!」
 と首根っこを掴まれ、乱暴に起こされる。く、苦しい!!!