「で?」
「なぁに?」
「なんで、俺の衣装がセーラー服な訳よ?」
「HRで満場一致で決まったからよ」
「俺は賛成してねぇよ」
「手を上げなかった人の一票は無効よ?議会制民主主義ってのはね、投票権を行使しない者に発言権も拒否権も人権もないの」
「いや、人権はあるだろ」
「セーラー服が嫌なら、メイド服でもいいわよ」
「なんで、女装ばかりなんだよ。オカマバーでもやるのか?」
「沖田くんにぴったりだからよ」
「じゃあお前はゴリラの着ぐるみでも着るのか?」
 またぐいっと片手で首根っこ掴んで持ち上げられる。
「黙って着りゃいーんだよ!!!セーラー服もメイド服もそれ着りゃ客引きになんだよ!!!」
「どんな客が引けるっつーんだ」
「もちろん、妄想猛々しい男女に決まってるでしょ?
 長身イケメン男子は白衣に眼鏡、二次成長前の童顔男子はセーラー服ってなぁ、学園祭の仮装喫茶の絶対のキマリなんだよ!!!法則なんだよ!!!法律なんだよ!!!予定調和とか、お約束とか、そーいう日本古来からある美しい風潮を知らねぇのか??」
「知らねぇよ!!!誰が決めたキマリだよ!!!」
「とにかく、皆で決めたキマリよ!!!当日は絶対、コレ着て、働いてもらうからね」
 絶対サボろうと俺は瞬時に心に決める。
「サボったら…殺すわ……」
 志村が見たものを三分間は確実に石にする、血走った恐ろしい目で睨む。条件反射的に俺の体はがちーんと固まる。
「す、す、すいませんでしたぁ!!!」
「分かればいいのよ。おほほほほ」

 なんで俺、土下座して謝ってんだろ?
 志村が女子達を引き連れて去って行く。