あー、疲れた………。

 ポンと肩を叩かれる。
 振り向くと担任の銀八が、やれやれと首をふりながら立っていた。
 つーか、担任教師なら見てたなら止めろよ!!!イジメだろ、これ!!!

「沖田。俺の嫌いなものを教えてやろう」
「は?」
「ひとつ、学園祭準備にはしゃぐ女子……。
 ふたつ、それに便乗してテンション揚げる、愚の骨頂男子……。
 みっつ、それら全てを包容し優しく微笑む教師だ……」
 銀八が遠い目をして呟く。
「で?何が言いたいんだよ!!!」
「人生ってなぁままならんものだってことが言いたいんだよ!!
 俺だって、それら全てを包容し優しく微笑む教師、なんかやりたくないのに、仕事だから仕方ないからやってんだよ!!!人生ってそう、しょっぱいものなんだ!!!ということを君に教えたい訳だよ、先生は」
 教師が仕事って言っていいのか?
「だから?」
「だから諦めて、人生の苦さをかみ締めろってことよ。世の中には盗んだ使用済みセーラー服を宝物だと有難く一生の家宝にする中学生もいるんだぞ?」
「そんな危険な中学生いねーよ」
「ポジティブに考えろ。堂々とセーラー服が人前で着れる。そんな機会、もう二度とないぞ?」
「一生そんな機会いらねーよ!!!」
「先生だって、学園祭の仮装喫茶のために白衣を貸すんだぞ?その上、この年で、学ラン着ろってよ?俺、幾つになったと思ってんだよ?言いたかねーが、四捨五入で30だぞ、30。四捨五入して、10やそこらのお前らにこの俺の気持ちが分かるか?また保護者や校長に先生はお若いですな、とかなんとか言って馬鹿にされちまうよ!!」
「生徒に向かって愚痴るな!!!」


 そうこうしてる間に教室では、放課後に有志で行われている学園祭の準備が始まった。
 看板を作る者。手書きのメニューを作る者。
「沖田くんも手伝いなさいよ!!!」
 と声を掛けられる。
 しまった!!!逃げそびれた。

 銀八はまたやれやれと首を振り、俺の肩を叩いて、力なく教室を出て行った。