あー、もうマジで、スカートって走りにくい!!!!

 俺は追われていた。

「あっちよ、あっち!!!」
 同じクラスの女子が廊下を派手な音を立てて走り抜けていくのを、特別教室棟に渡るドアの裏側にへばりついて隠れて見送る。
 もういーかげんに諦めろよ!!!!

 俺の制服は、俺が逃げ出せないようにと志村に奪われて隠された。
 セーラー服の上からフリルのエプロンをつけさせられ、メイドがつけてるようなヘッドドレスを頭につけて、こき使われた。
 あー、もうマジでやってらんねぇ!!! この恥ずかしいセーラー服のまんまでも逃げ出すしかない。
 適当なところで抜け出して、適当な場所に隠れて今日は一日昼寝する!!! と決めて、客引きするフリをして廊下に出て、そのまま逃走した。
 でも追っ手はしつこく追ってくる。なんでそうしつこいんだ!!!!俺一人サボったって、別にたいした害はないじゃねーか!!!!

 しばらくの間、トイレに隠れていよう、と一階の男子トイレに行くと、男子達に凄く変な目で見られた。
 そりゃ男子トイレに、セーラー服を着た男が突然入って来たらびびるだろう。
 俺はワザとがに股でドカドカ歩いて、洋式トイレの個室に入り、はーっと大きなため息をつく。

「沖田くーん!!!!」
 外からは相変わらず、俺を探す女子どもの声が聞こえる。
「もしかして、トイレに隠れてるんじゃない?妙、呼んでこようか?」
 なんて声が聞こえた。
 ここはまずい。志村は男子トイレだからって、入るのに躊躇するような繊細な神経を持ち合わせていない。絶対に踏み込まれて蹴破られる。
 あぁ、俺の安住の地はどこにあるのだ?
 少なくとも、今日一日、俺の安住の地は学園内にはない。
 俺は仕方なく、トイレの窓から逃げ出した。