もうちょっとで手が届きそうで届かないところに止めてある飾りを取ろうとして、バランスを崩して脚立がぐらっと大きくゆれる。
「うわっ」
 お、落ちる!!!!
「危ねぇっ!!!」
 土方の声がした。
「キャーッッ!!!」
 と女子の悲鳴が上がる。
 俺はとっさに目を瞑る。ガシャーンと音を立てて脚立が倒れた。
 落ちたと思ったんだけど。どこも痛くなかった。
「はいはい。気をつけなさいよ〜」
 耳元で低い声がした。恐る恐る目を開けると、俺は、銀八の肩に担がれてた。
「後夜祭の片付けが終わって、家に帰るまでが学園祭だぞ〜。うちのクラスでけが人が出たら、怒られるのは俺だからな〜?」
 そういいながら、銀八が俺を肩から下ろす。
「おお、すまんすまん。ワザとじゃないぞ〜」
 下を見ると、銀八の足元で土方が倒れていて、銀八の奴に踏まれてた。
 バシャバシャとまたフラッシュが炊かれる。
「沖田くんを取り合って、禁断の三角関係ね〜!!!!」
 女子が妄想を叫んでる。
「ふざけんな!!!」
 と土方が怒鳴る。
「おい、土方。そんなに俺が好きか〜」
 俺が心底呆れたように呟く。もちろん冗談だ。
「冗談じゃない!!!とにかく!!!お前、もう脚立上るな!!!!禁止だ!!!」
「はいはい。分かった。分かったよ」
 俺が仕方なく、隅に寄せられていたオルガンを運ぼうとした。あれ、結構重い……。
 頑張って一人で引きずっていると、
「どけ」
 って土方がかわってくれた。
「土方……。そんな積極アピールされても俺、困っちゃうんだけど……」
「違うって言ってんだろ!!!じゃあお前、そっちもて!!!!」
「青春だねぇ……青春」
 片付けを全く手伝わない銀八がうろうろしながら独り言みたいに呟く。