「沖田くん、水〜。よかったら使って〜」
 親切な女子がペットボトルの水をくれた。
「サンキュー。近藤、飲めるかー?」
 返事がない。
 仕方なく、胸に抱きかかえて、思いっきりペットボトルの口を近藤の口の中に突っ込んだ。
「ぐはぁぁあああ!!!」
 飲みきれなかったのか、気管に入ったのか、奇声を上げて突然暴れたので、500mlのペットボトルが中を舞って、水を頭から思いっきり被る。
「げほっ。げほげほっっ!!!」
 近藤が、引き続き激しく咳き込んでいる。
「うぇぇぇええええ」
 俺は頭から水を被り、夏の薄いセーラー服は肌にぴったり張り付くし、短いスカートも足にまとわりついて気持ち悪い。
 致し方なく、びしょ濡れのスカートを履いたまんま、めくり上げて絞ってたら、
「お前、何やっとんじゃー!!!!」
 と担架を借りてきた土方に後ろから怒鳴られた。
「何やってるって、濡れたからさぁ」
「お前には恥じらいってもんはねーのか!!!」
「恥じらいって、いーじゃん、ブルマ履いてんだからさ、見せたって減るもんじゃなし!!!」
「しかもなんで頭からずぶ濡れになってんだよ」
「近藤に水飲ませようとしたら、突然、暴れたんだよ、こいつ」
 近藤を見下ろしたら、泡を吹いてぴくぴく痙攣していた。
「な、なんか事態が悪化してね?」
「先生を呼べ!!!せんせーい!!!せんせーい!!!!」

 結局、近藤は持病のひきつけを起こした、ということになって、救急車で運ばれた。
「あらら、フォークダンス楽しみにしてたのに、残念だねー」
 担架で運ばれて行く近藤を見ながら、俺はいささか同情的に言う。
「てめぇがトドメを刺したんだ」
 呆れ返った声で、土方が呟く。
「なんだよ、人聞き悪いなぁ」
「つーか、着替えろよ。濡れたまんまだと風邪引くぞ」
「あらあら、心配してくれるのー?ほんと、俺のこと好きなんだから〜」
「違うってんだろ!!!!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。そのうち乾く」
 といって、スカートをばたばた仰いで早く乾かそうとしたら、
「だから恥をしれ恥を!!!」
 と怒鳴られた。