いつの間にか、とっくに1フレーズ終わってた。
 首根っこをつかみ合って睨みあったまま、俺達は一触即発の、マジで火を噴く五秒前だ。
「ほらほら、後ろが詰まってるよ。チェンジチェンジ」
 とその時、低い声がして、土方がドンと突き飛ばされて、顔からこけた。
 そして、俺の手が誰かに取られる。
「おぉ土方、すまんすまん」
 学ラン着た銀八だった。
「結局、フォークダンス参加したんだ?」
「せっかくだから、童心を思い出してみよーかと」
 なんとなくそのままなし崩し的に踊りながら、そんな会話をする。
「ったく、これ以上、問題起こしてくれるなよ。救急車が来ただけで、大問題なんだからなー。ここで、お前らが喧嘩すると俺が怒られるんだからなー」
 と銀八がぶつぶつ呟く。
「だって、土方、ムカつくんでさぁ!!!」
「それはこっちの台詞だ!!!」
 隣で次の相手と踊ってる土方が怒鳴る。
「喧嘩する程、仲が良いって言うけどさぁ……」
 やれやれと銀八がため息をつく。
「仲良くない!!!全然仲良くない!!!俺、こいつ嫌い!!!!」
「俺だってお前なんか大っ嫌いだ!!!」
「うるせぇ、やるかこのやろう!!!」
 反射的にぐいっと、目の前にいる銀八の首根っこを掴んで引き寄せる。
「お前ら、ほんと血の気が多いんだから。落ち着けってーの」
 銀八にデコピンされた。いてぇっ。


 結局、喧嘩した罰だって、キャンプーファイヤーの片付けまでやらされて、やっと、自分の制服を返してもらった。
 教室に戻ると、もう誰もいない。片付けを最後までやらされた俺と土方しかいなかった。

 まったく、本当に散々な日だった。

 俺が着替えようと、セーラー服を脱ぎかけたら、
「いきなり何やってんだ!!お前!!!」
 って、土方に怒鳴られた。
「何やってるって、着替えるに決まってんだろ?セーラー服で家まで帰れっていうのか?てめぇは」
 俺が当たり前の答えをすると、土方は変な顔をした後、
「あぁ、そっか」
 と一人で赤い顔して納得していた。

 微妙な沈黙が続く。土方は全く俺の方を見ない。

「あのさぁ…土方、意識しすぎ。つーか、そんなに俺が気になるか?」
「違うっつってるだろーが!!!!」
 土方が、赤い顔で、怒鳴り返してくる。

 あー、やれやれ。疲れた。俺は大きくため息をつく。

 中学生って、本当に自意識過剰で嫌になる。