体育の授業が終わった後も、土方は超不機嫌で、防具こそ手荒に扱わなかったが、ドアを激しく開け閉めしたりして、近藤にまぁまぁと宥められていた。

 片づけで遅くなった土方が、ドカドカと教室に入ってきて、音を立てて、ドアを閉める。
 苦虫を噛み潰したような顔で、怒りオーラを全開にして。
 やれやれ。

 まぁ、素人相手に本気出したのは俺も大人げなかった。じいちゃんにバレたらめちゃくちゃ怒られるだろうな。
 鍛え方が違うんだから、一般人には手を出すな、とガキの頃から、口酸っぱく言われてきたのだ。
 体育の時とかは、上手く猫を被ってきた。いくら食べても太らない体質で、細いから強そうにも見られないし。手抜いてやってても、手抜いてやってるようには見られなかった。
 運動神経はいいから、体育はいつも4か、5だったけど。

 あーあ、カッコワリーの。俺に教えてやるって息巻いてたクセに。クラス全員の前で投げ飛ばされて。今まで、クラスの中心的人物で、一目置かれてきたのに、今じゃすっかり三枚目だ。クラスの皆が、ひそひそと体育の授業であったことを噂してる。

 しかしまぁ、事故とは言え、下が畳だったとはいえ、受身も取れない素人を投げ飛ばしたのは俺が悪かった。
 仕方ない。
 俺が立ち上がるとクラスがざわっとどよめく。
 そのまま土方の席の前まで行く。

「事故とはいえ、投げ飛ばしたのは悪かった」
 と一応、謝った。
 土方はそっぽを向いたまま、俺を一瞥もせず、返事すらしない。教室に不穏な空気が流れる。
 せっかく謝ってやったのに、やっぱこいつムカつく。