「げっ」
「げげっ」
道場に行ったら、出入り口の所に土方がいた。なんでこんなところにいるんだ。
「なんだよ?また俺のストーカー?そんなに俺が好きか?土方よ〜」
「ふざけんな!!」
いつもの冗談を言ったら怒鳴り返される。
「つーか、なんでお前がここにいるんだ?」
気まずそうに土方が聞く。
「だって、ここ、俺のじいちゃんちだもん。
っつーか、道場の見学ってよりによってお前かよ〜。なんだよ、がっかりだぜ」
この道場は中学の学区外ではあるけど、自転車で15分で行ける距離だ。
「っつーか受験生が、塾に通わなくていーのか〜?」
「塾には通ってる!!!てめーこそ、塾に通わなくていーのかよ」
「俺はいーんだ。高校は適当に私立の高校に推薦で行くから」
剣道のジュニアチャンピオンの俺にはじいちゃんの知り合いのいる学校から、スポーツ入試の話が結構来ていた。じいちゃんがここに行けって言ってる剣道が有名な学校があるから、多分そこに行くことになると思う。
「そーかよ、良いご身分だな」
フンと土方がそっぽ向く。
「で、何を習いたくて来た訳?」
俺はぺらぺらとファイルをめくりながら聞く。
「もう帰る!!」
「まぁそーいうなよ、折角来たんだから、道場の見学くらいしてけって。茶くらい出すぜ」
帰ろうとする腕を掴んで、引っ張った。
「離せって」
腕を振って抵抗される。無理やり、腕を組んで、力づくで引き寄せてくっつくようにして、ファイルを見せる。
「柔道、剣道、合気道、空手、護身術にスポーツチャンバラ、いろんな教室やってんだぜ〜」
「離せって言ってるだろ!!!」
ぶんぶんと腕を振られる。