「板張りの剣道場で、月、水、金は剣道で、火、日が居合い。
 畳敷きの柔道場で、月、水、金が柔道で、火、木が空手。土曜日が合気道。
 単発で護身術とか、色々あるけど。
 で、何が習いたい?やっぱ剣道?」
 土方と腕を組んだまま、引きずるように無理やり引っ張って、まず、柔道や空手の教室をやってる畳敷きになってる柔道場の引き戸を開けて、電気をつける。
 畳の良い匂いがする。
「今、小学生の授業終わったばっかりで、空いてるけど。七時半くらいから、中学生とか、オトナ向けの教室が始まるよ」
「離せってば」
 土方は俺の説明なんか聞いちゃいない。
「上がってみる?」
「いい!!!もう帰る!!!」
 土方はめっちゃ不機嫌な顔だ。コイツの不機嫌な顔を見ていると、さらに嫌がらせしたくなる。我ながら俺は、困った、嫌な性格なのだ。
 俺はあえて土方の意思を無視して、腕を組んだまま、無理やり引きずっていく。
「で、剣道場はこっち〜」
 無理やり、狭い廊下を突っ切り、剣道場へ引っ張っていく。
「見学はもういい、帰るって言ってんだろ!!!」
「まぁ、せっかくきたんだから遠慮すんなよ」
 無視して道場の引き戸を開ける。
「ここが剣道場」
 クセで一礼してから、靴を脱いで、上がる。
「せっかくきたんだから上がれよ」
 土方は靴を脱がない。引き戸の外側でぶすーっとしている。やれやれ。
「せっかく来たんだから、クラスの見学してく?剣道の授業、始まるまであと一時間半くらいあるけど。一日無料体験も歓迎だぜ」
「……………」
 土方はぶすーっとした顔で目を反らすだけで返事もしない。はー。