十分、休憩してから、立ち上がる。
「んじゃ、ちょっとその場で振ってみてよ」
「見てくれるってか?」
「あのさー、俺のが剣道歴と成績では上なんだからさー、多少は剣の道の先輩として敬えよ。剣道は礼儀が肝心なんだぞー。剣道は礼に始まり、礼におわるって言うだろ」
「…………」
 土方がんなことてめーに言われたくない、という顔で俺を睨む。まぁそーだろうなぁ、と俺も思う。
 仕方なさそうに、土方が立ち上がり、剣を振るう。
「んー……」
 しばらくじーっと見てから、やれやれと首を振って、思わずため息をつく。
「嫌味な奴だな!!!言いたいことがあったらはっきり言えや!!!」
 と怒鳴られる。
「いや、言ったら怒りそうでさぁ……」
「言わなくってもそんな態度とられたら怒るわ!!!」
 土方は短気だ。やれやれ。

「とりあえず、切り返しからやろか」
 と提案する。

 まずは土方から打たせる。掛け声をかけながら打ち込んでくるのを、俺は、正面から「上手く受けて」見せる。切り返しは、上手く受けることが重要なのだ。
 次に俺が打つ。上手く、型に沿って、正確に、正しい足さばきと呼吸法で、でも早く、あくまで見本になるように打つ。
 その繰り返し。様子を見ながら、何回も繰り返す。
 剣を受けながら、たまに、
「足が上がってる」
 とか色々と注意する。
 土方は上手くないけど、さすが、俺に恨みがある分だけあって、凄い気迫だ。それだけは、賞賛できる。
 なかなか白熱した切り返し稽古になって、土方の足がふらついてきたのを見て、
「終了〜。休憩しよーぜ」
 と声を掛ける。
「まだまだ!!」
 と熱くなってる、土方が迫ってくる。俺はため息をついて、
「足、ふらふらだぜ。次は互角稽古(試合形式の稽古)してやっから」
 と面を取ってから、俺は言って、無視して、その場に座って胡坐をかく。土方も諦めて、その場に座る。
 俺は、まだまだ序の口だから、そんな汗も掻いてないけど。面を取った土方はもう汗でダクダクだ。
「ほい」
 とタオルを投げてやる。
 無言で受け取って、タオルで汗を拭く。