もうあんまり時間がない。次のクラスが始まってしまう。五分ほど、休憩して、立ち上がる。土方も慌てて立ち上がる。
面をつけて、向かい合う。
「本気で打ち込んできていいぜ」
と先に宣言する。
「上等だ」
と土方が言う。
打ち込んでくる土方の剣を全て、返し、あっさりと一本取る。でも、
「まだまだぁ!!」
と怒鳴って、土方がまた打ち込んでくる。
やれやれ。
何度も何度も土方は打ち込んでくるけど、俺にはかすりもしない。
土方の足はもうふらふらだ。
景気のいい音を立てて、土方の面に打ち込んで、
「終了〜」
と声を掛ける。
「まだまだ!!」
とふらふらしながら、土方が怒鳴る。
やれやれ。
俺はさっと柔道の足払いを掛ける。派手に土方がひっくり返る。
「無理無理、もう足が踊ってるっての」
「くそーっっっ!!!」
と土方が天井に向かって怒鳴る。
「もっと基本って奴を身につけた方がいいぜ。剣道の精神の基本って奴もな〜。勝ち負けにこだわるなって、一番最初に習わなかったか?」
俺は防具を片付けながら、しごくもっともなことを言う。でも、俺が言うのもなんだかなーというのが自分の中でもあるので、どうも軽薄な言い方になってしまい、だから土方を怒らせるんだろう。
土方は床に寝転がったまんま、ゼエゼエと息を吐いている。
「とりあえず、次の授業始まるから、防具脱いで。休憩なら幾らでも母屋でさせてやっからさ」
声を掛けると、寝転がったまんま、面を外す。
「やっぱ…体が鈍ってて駄目だ……」
土方が悔しそうに言う。やれやれ。ほんとに、負けず嫌いな奴だ。
「じゃあ稽古すりゃいーじゃん」
と俺は呆れて言う。
「受験終わったら、ちゃんとやる」
だってさ。