そのうち、大人対象の教室が始まったから、剣道と柔道のクラスを見学して、おばあちゃんが礼儀正しい(外面の良い)土方を気に入って、飯を食っていけと押し捲って、結局、断りきれず、土方は夕飯までうちで食っていった。

 ばあちゃんは、自分の手料理を誰かに振舞うのが好きなのだ。
 初めて遊びに来た奴は必ず誘われるし、生徒達も、一度は捕まえてご飯を食べさせられている。
 いつ何人でもお客が来ていいように、煮物とか豆を炊いたのとかきんぴらとか、あーいう日持ちする常備菜を沢山炊いて冷蔵庫に入れてて、山盛りごはんと、具がいっぱい入った味噌汁と一緒に並べて振舞うのだ。
 ハンバーグやカレーライスで育ってきた子供には、ばあちゃんの煮物ばかりの晩御飯は不評だが、土方の口にはあったようだ。
「美味しいです」
 と何度も言って、ばあちゃんを喜ばせて、次から次へと冷蔵庫から瓶詰めのうに、とか、とっておきの塩辛とかを出させていた。
 じいちゃんが帰ってきて、部活で剣道を始めて、これからも続けたいと思っているという土方のことをじいちゃんも気に入って、じいちゃんお得意の剣道とは何ぞやみたいな話を土方に向かってずーっとしてた。
 ばあちゃんは中学生になってから、俺が初めて友達を連れてきた、と喜んでいた。
 っつーか、連れて来てないし。友達でもないっつーの。

「これからも仲良くしてやってね。また遊びに来てやってね」
 と、ばあちゃんに何度も頼まれて、はぁ…とか何とかいいながら、土方は困ってた。
「無理しなくていーぜ」
 と俺はぼそっと呟く。
「そうだ、土方くんに勉強見て貰いなさいよ」
 ばあちゃんのテンションはどんどん上がる。
「だから、俺達は仲悪いってさっきから言ってんだろー!!!」
 あーもう恥ずかしい。