なんとなく癖でそのまま学校の近くまで自転車を走らせて、
「で、土方の家ってどっちだっけ?」
 って聞いた。
 あっちと指差された方向に方向転換しようとしたら、重くてぐらっとちょっと自転車がふら付いた。そしたら、
「止めろよ。俺が変わる」
 って言われたので、まぁ本人の方が道も分かるだろうしと、自転車を止めて前を譲った。

「うぉっ。あぶねっ」
 自転車の後ろに、なんとなく土方とくっつかないで済むように、空間を取ってまたがったら、走り出した途端、荷台が小さいせいで後ろにずり落ちそうになって、思わず声を上げた。
 土方は一旦自転車を止め、振り返り、俺に向かって呆れたように、
「あぶねーからつかまってろよ」
 と言った。
 仕方なく、腰の辺りに腕を回してつかまった。
 自転車の荷台に座るって、がたがた揺れる度に結構、お尻が痛い。誰かの自転車の後ろに乗るなんて、久しぶりすぎて忘れてた。
 自転車はギュンギュン音を立てながら、がたがた揺れながら進んでいく。

「表通りは警察がよく見回りしてっから、遠回りだけど、裏道回ってく」
 と土方が行って、暗くて狭い道に曲がった。
「そーいや、お前んち、両親とも警察だっけか?」
「そう」
「やっぱ厳しいのか?」
「どーかなー。よそんちと比べたことがないからわかんないけど。
 大体、二人とも忙しいから、じいちゃんばあちゃんに育てて貰ったようなもんだし。うちの親、超放任主義だから。新聞に載るような犯罪さえ起こさなければ元気で健康なら何でもいいってさ」
「受験とか、成績のこととか何にも言われないのか?」
「うん。高校だけは出て欲しいみたいだけど、それ以上は好きにすればいいってさ。父ちゃんも母ちゃんも休みに俺が勉強してると、勉強なんかしないで遊びに行こうって誘いにくるし。テスト期間でも毎日のランニングは絶対休ませてくんないし」
 俺はぶつぶつ呟く。
「それはそれで大変そうだな」
 土方が振り向いて、ちょっと笑った。俺の前で土方が笑うのを見るのは初めてだった気がする。