別に土方と仲良くしようって思った訳じゃないけど、別にまぁ、教室に土方がいても、そこに存在してもいいかなって程度の気持ちだ。
 おはよう、ぐらい言ってもいいかな、程度の。



 翌日、三時間目にまた体育があって、授業の前に防具やらを取り出して準備してた土方の肩を、
「よっ、今日もエライな」
 とか何とか言って軽く叩いたら、
「いてぇぇぇええええ!!!」
 と土方は派手な声を上げた。
「な、何もそんなに派手に痛がるほど、強く叩いてないだろ〜?」
 こっちが驚いて、そう言ったら、
「ちがう。筋肉痛なんだ」
 と不機嫌に言った。筋肉痛?昨日の俺との練習で筋肉痛になったのか?
「お前……年だなぁ……」
「年じゃねぇ!!!同い年だろ」
「あ、俺、マッサージしてやるよ。得意なんだ」
「イラネェ」
「ま、遠慮するなよ、ほれ」
 と後ろから土方の手首を二つとも掴む。
 そのまま土方にバンザイさせて、床に後ろに倒れこみ、俺の立てた膝の上に土方の背中がくるよう、土方の上体が自分の胸に乗るようにして無理やり体をエビ状に伸ばす。
「ぎゃあああああ!!!!いてぇぇぇええええ!!!」
 と土方が叫ぶ。
「効くだろ〜?」
「やめろ〜!!!いてぇぇぇええええ」
 膝でゴリゴリ腰を刺激する。
 30秒ほど体を伸ばして、開放したら、
「なにがマッサージだ!!これは、プロレスの技だろ!!!」
 って怒鳴られた。
「違う違う。えーとタイ古式マッサージ」
「嘘つけぇぇぇぇえ!!!適当なこと言うなぁ〜!!!」
「ぐぇぇえええ」
 腕で首を絞められる。なんとか土方の腕から抜け出して、
「プロレスの技はこうだろ、こう」
 と言って、逆にコブラツイストを決めた。じいちゃんがプロレス好きのせいで、子供の頃からプロレスの興行が近くに来ると連れていってもらっていた俺は、もちろんプロレス技も詳しい。
「いてぇぇぇええええ!!!」
 土方が痛がるのを見て、周りのみんながゲラゲラ笑う。俺もつられて笑ってしまった。

 それから結局、なんとなくなし崩し的に、体育では土方と俺がいつも組むということになってしまった。
 俺は一匹狼だから、いつも決まって誰と組むみたいなのがなくて、なんとなく余った奴と組んだり、ペアの奴が学校を休んでその日あぶれた奴と組まされることが多かったのだが。
 (俺と土方は負けず嫌いだから、いつもペアを組むと最終的には一触即発状態になり、にらみ合っての真剣勝負になるので、周りや教師から恐れられた。最終的にあの二人はほっておこう、みたいな扱いになった。)


 でも後日、自転車でニケツしてたのを誰かに見られていたらしくて、夜、デートしていたという噂が学内を駆け巡り、体育の前の放課に取っ組み合いのプロレスをしていたのは、いちゃついていたとか痴話げんかしていたとかいう曲解した噂に変質し、学園内をところ狭しと駆け巡って、俺と土方がデキテルというのは、「不動の真実」として俺達の知らないトコロで学内にすっかり定着していた。

 あーもう、中学生ってほんとマジでかなりウザイ。


※この話の続きは夏コミ発売の赤依個人誌で。