ここはどこもかしこも血生臭い。
 この俺自身に、もう血の匂いが煙草の煙の匂いのように染み付いている。
 それは死の匂いだ。
 今、隣を歩いているこいつも、酒を酌み交わして馬鹿話しているあいつも、明日には冷たい肉の塊になって、地べたに転がっていてもちっともおかしくない。
 実際、何人もの仲間を亡くしてきたし、俺も死ぬような思いをしてきたが、運良く今の所は生き延びてる。とりあえず、今の所は。

 それでも死神が、いつも俺の傍にいるのを感じる。



 こんな命賭けの仕事を好き好んでしてる俺達だって、十分マトモな奴らとは言えやしねぇ。
 今のこの平和なご時勢に、それでも剣が捨てられねぇ、時代遅れの血生臭い野郎共だ。
 当然、家族も本気の女も作らず、こんな豚箱と対して変わらない所にまとめて詰め込まれても平気な無神経な奴らだ。(俺は隊を任されるようになって、命狙われることが増えたから、奥の個室を与えられたが。)
 まぁ神経が細やかだったら、派手なドンパチも人斬りもできねぇけどな。
 鈍くならないとやってられねぇ。
 何も感じないように鈍く。鈍く。

 ここにいる奴らは、酩酊して鈍くなるためかのように酒を飲み、血の匂いをごまかすためのように咽るくらいに煙草を吸う。
 自分のすぐ隣にいる死神に気づかないためかのように。

 どのみち長生き出来そうにはねぇな。
 斬られて死ぬか、煙草で肺やられて死ぬか、酒に臓をやられて死ぬか。
 俺達に残された死に様はそのどれかだ。