「隊長はなんでこんな因果な商売してんですか〜?」

 と酔っ払った隊士の一人が俺に聞く。
「ん〜?」
 やれやれ。つまんねぇ質問だ。
「……金が欲しかったから」
 と俺が素っ気無く答えると、
「えぇぇぇええ!!!そりゃロマンがねぇ〜!!!」
「あーあ、これだから現代っ子は!!」
 とか何とか口々に言って騒ぐ。

 剣振るうのがロマンたぁおめでたいが、コイツらは本気でそう思っているのだろうから、洒落にもならねぇ。

 ロマンがないと言われようが、ガキの頃から俺は早く稼げるようになりたかった。


 剣を振るうしか能のない士族崩れに、マトモな仕事なんか今の世の中にはねぇんだよ。
 親を早くに失い、病弱な姉一人が唯一の肉親の俺は早く稼げるようにならないといけなかった。
 俺が稼がないと、病弱な姉が弱い体に鞭打って働く羽目になる。
 金が欲しかったから、ガキには無理と局長の近藤さんや副長の土方さんに言われた時も、無理やりついてきたし、きたねぇ仕事もてめぇから進んでした。そして異例のスピードで出世した。
 給料はそれなりに上がったが、最低限必要な小銭だけ残して、後は全て送金していたから、俺にはいつも金がなくて貧乏で、年下であることをいいことに、上司、部下も関係なくたかった。

 苦労して苦労して、病気を悪化させた姉上には良い暮らしをさせて、良い医者に見せてやりたかった。
 何とか、病気を治してやりたかったという訳じゃない。
 姉上がそうは長くはないことは子供の頃から分かっていた。姉上は父や母と同じ、死の匂いがいつもした。
 見まいとしても、どうしても見えてしまう死の影がいつも姉上の周りにまとわりついていた。香水の残り香のように、宿命的に。
 人は誰もがいずれ死ぬのだ。それ自体は仕方のないことだ。もちろん、出来るだけ長く生きて、楽しい思いをして貰いたいと思うが、天地はどうやっても逆さまにはならねぇ。