「俺だってなー、髪が天パじゃなければモテモテだったんだよー、実際」
とかなんとか、旦那は女共の醜い戦いを見物しながら、聞こえないような小さな声でぶつぶつ呟く。
分からねぇ……。
実際、こんなに女に囲まれてんじゃねぇかよ。
何故か醜い女の戦いは眼鏡が萌えか、チャイナドレスが萌えかとかいうとことん不毛な方向に転がり、醜い争いは収まりそうにない。
「お前も余計なこと言うなよー」
と旦那に投げやりに言われた。
「俺は思ったことを正直に言っただけでぃ」
と言い返す。
「俺にお世辞を言ったって何にもでねーぞ、おい。それともあれか?新手の詐欺か?持ち上げといて、地獄に叩き落そうって寸法だろ?」
と呆れたように言われた。
「お世辞じゃねぇっす。だって旦那はこんなに女に囲まれてるじゃねーですかぃ」
と俺が答えると、
「こいつら、女じゃねぇだろ?!一応は女の形(ナリ)をしてる物体、とか、女だった過去を持つモノとかだろ?」
と旦那が派手な奇声を上げ、
「なんだってぇぇええええ??」
と聞き捨てならぬと女共が揃って怒声を上げる。
旦那は女共から派手に袋叩きに合いながら、
「沖田!てめぇ、俺をハメやがったな!!」
と叫ぶ。
やれやれ。つきあってられねぇ。
俺は乱闘で揺れる安普請の床を転げないように気をつけながら、
「じゃまた〜」
と言い残して、万事屋を出た。
外に出てもまだ女共のあげる派手な奇声と派手な騒ぎが聞こえてくる。
通行人が道端で立ち止まり、野次馬まで集まって、二階で行われている騒ぎの元凶を見上げる。
「女たちに袋にされてるみたいだぞ。浮気でもばれたんかいなぁ」
「おー、モテんなぁ。万事屋銀ちゃん?」
と通行人が勝手な噂話をする。
銀の雫降る降るまわりに。だっけ?
教科書で読んだな。なんかそんな詩。
銀の雫降る降るまわりに。金の雫降る降るまわりに。
今日も女どもが集まっている。
あー、本当に煩かった。
女の甲高い声は神経に障る。
※続きは2007/09/02 発売の本誌「銀の雫降る降るまわりに」にて。