近藤が突然連れてきたガキ、沖田総悟。

 ほんとに、何考えてるんだかさっぱり分からないガキだ。

 まず、どこまで自分の置かれてる状況を理解しているかが分からない。
 近藤の奴は、総悟が口を利かないのを、親を殺され、強いショックを受けたからだと同情的に言うが、極力必要なこと以外、一切喋らないのは、喋るとまずいと分かってるからではないのか?
 近藤はカワイソウだと言ってそのあたりのことは一切聞かない。別に俺だって、総悟の過去や指名手配中の真犯人を知りたい訳じゃない。

 庭で何時間も何をしているのかと思えば、じーっと、庭の小さな池を無言で見ていたり、穴を掘りつづけていたり、と、およそ普通の子供らしいとは言えない薄気味悪い総悟の行動はただ単に頭が弱い奴なんじゃないだろうか、という気もする。
 しかし、いくら近藤に命令されたからといって、道場の敷地内から一歩も出ようとしないトコロを見ると、ちゃんと自分の状況を理解して行動しているような、気も、する。

 今となっては、総悟の頭がただ単に空っぽだってのは知っている。
 しかし、「無知・知らない・分からない」、というのと、「感じないようにする」というのは全く別物なのだ、ということが同時に分かった。
 総悟のソレは完全に後者だ。総悟は分かっているし、知っている。だけど、極力、何も感じないようにする。