深夜、寝ているとぐぃっと体を押されて目が覚めた。
総悟は、俺の布団に潜りこんでくる時、自分の寝る場所を作るために、声も掛けずに俺の体を力いっぱい押してくる。
隣の部屋から、近藤の高いびきが聞こえる。
やれやれ、と思いながら仕方なく、総悟の寝る場所を作ってやる。全く、可愛げのないガキだ。
夜中に高い悲鳴を聞いて目が覚めた。反射的に枕もとにおいてある短刀に手を掛ける。
周りの気配を探るが、誰かのいびきが聞こえるだけで、あたりに異常は感じられない。
立ち上がろうとして、ぎゅっと袖を握られているのに気付いた。
総悟が、俺の服の袖を硬く握り締め、眉間に皺を寄せていた。
悪い夢でも見ているようだ。
ふーっと大きくため息をつく。
「起きろ、総悟」
と小さな肩を揺らすと、大きな目をパチンと開けた。
総悟は小さく震えていた。しばらく寝ぼけているのか、虚ろな目で、ゆっくり瞬きを繰り返していた。
「水でも飲むか?」
と聞く。でも勿論、いつものように、うんともすんとも返事は返ってこない。
あの悲鳴は、総悟のものか?
近藤がいう、総悟が傷ついている、というのもあながち嘘じゃないのかもしれねぇな。
しばらくして、総悟はむくっと起き上がり、何も言わずに、俺に振り返ることもなく、部屋を出て行った。
近藤の所に戻ったのだろう。
そういえば五つや六つのガキだというのに、コイツの泣いたトコロを見たことがない。