総悟は一度も外に出たいとは言わなかったが、縁日の日、読み書きを習いに来たガキ達が今日は近所の神社で縁日だと、硯の片付けもそこそこに一斉に、縁日に行くのだ、と足早に立ち去った後、ガキ共が消えた門の外をじーっといつまでも自分も行きたそうに見つめていた。

 それを見ていた近藤は、「縁日は三日間やるから、明後日に連れて行ってやる」と総悟に声を掛けた。
 それを聞いた総悟はちょっと嬉しそうな顔をした。

「総悟を外に連れ出すのか?まぁ、お前が一緒ならいいか」
 と俺は言う。
「トシ、お前もつきあえよ?」
 と返された。
「縁日なんか柄じゃねぇが。仕方ねぇか。護衛につきやってやるよ」
 ため息と一緒に煙草の煙を吐きながら答える。

 なんせ時間だけはたっぷりある。

「そうと決まれば準備しなきゃな」
 近藤が張り切って腕を振り回す。
「準備?何の?」
 俺の声は聞こえなかったようだ。慌てたように門を出て行った。