今度は、よたよたと総悟が金魚掬いの屋台に歩いていく。そして、杏飴をなめながら、金魚をぼーっと見ている。
「金魚は駄目だぞ〜。飼う場所がないからなー」
 一応、注意してみるが、聞いてない。金魚掬いがしたい訳ではないようだ。ただ、じーっと金魚がひらひら泳ぐのを見ている。
 あんまり金がないから、黙って金魚見て時間が潰せるなら、良いんだが。それに付き合う俺は退屈だ。
 長い時間、他所の子供が金魚を掬うのを見ていた後、立ち上がる。
 今度は射的の屋台にトトトッと歩いて行き、他所の子供が的を狙うのをただじーっと見つめている。
 やれやれ、本当に変なガキだ。

 そんな感じで、他所の子供達が遊ぶのを見ていた総悟が急に立ち上がり、あたりをキョロキョロし始めた。
「どうした?総悟」
 唇をかみ締めるだけで返事をしない。
 なんだか、モジモジしていた。
「お前、厠に行きたいのか〜?だから、それくらいちゃんと口で言えっての」
 俺は仕方なく、総悟を抱き上げて、厠を目指す。
 でも厠には行列ができていた。
「総悟、我慢できるか?」
 と聞くが、唇を噛んで、うなるだけで返事をしない。
「あー、もう仕方ねーなぁ」
 総悟を抱えて、人気の少ない神社の裏側へ走った。
 人気の少ない草むらの生い茂った辺で、総悟に用を済まさせた。祭りの明かりもここまでは届かなかった。月明かりだけが頼りだ。
「厠に行きたいなら、行きたいって、限界が来る前に口で言えって!!!!」
 俺は口うるさく叱る。総悟は返事をしない。