唇に柔らかい何かが触れているのに気づいて目が覚めた。
 えーと………。
 ちっこい誰かが俺にキスをしていた。
 思わず、目の前のちっこい肩を抱いて、飛び起きる。
「いてぇぇええええええ!!!!」
 同時に激痛が走った。
「おぉ、起きた」
「ほら、起きただろ?総悟」
 暇な浪人連中が、何人か俺の布団を取り囲んでいた。
 総悟が相変わらずぼけた顔で、ぼーっと俺を見上げている。俺にキスしていたのは総悟だ。
「は〜?」
 俺は現状が掴めず、とにかく奇声をあげた。
「いや総悟がさぁ、ずーっと、寝ないでトシさんの布団の前から離れないからさ。冗談で、キスしてみろ、起きるっておまじないがあるぞって言ったら、まさか本当にやるんだもんな〜」
 としみじみと感心したように言う。
「やっぱ、子供は純だなぁ」
「変なこと教えんな!!!」
「でも本当に起きたから、やっぱ効果があるんだな〜」
 とにかく暇に浪人連中はやることがないので、くだらないことでも大袈裟に感心してみせる。
 殺気を感じて振り向くと、ふすまの陰から、近藤が、俺を恨めしそうな顔で見ていた。
「ひどい……。総悟のファーストキスは、俺が大事に取っといたのに……トシに奪われた……」
 近藤が恨めしそうに唇を噛んで呟く。
「あーもう、この変態が〜!!!!」
 総悟はずっと俺の枕元についていたのか?少しは馬鹿でも責任を感じたのだろうか?相変わらずの無表情だが、なんだか眠そうな顔をしていた。