総悟が無言で、俺の胸をつつく。
「いてっ。いてててててっ。触んな、馬鹿!!!!」
 痛がる俺を見て、総悟はにや〜っと笑った。
「うわっ。こいつ笑った!!!」
「トシが目を覚ましたから、喜んでるんだろ?」
「いや、絶対違うって!!!俺の痛がる姿見て喜んでるんだって、こいつ!!!!」
「ふー。トシは総悟を誤解している……」
 近藤が大袈裟に首を振ってみせる。
「こんなにつぶらな瞳でカワイイんだぞ〜。女装だって猫耳だってなんでもこいだ…」
 鼻の下を伸ばしてうっとりと近藤が呟く。うえっ。ぞくっと寒気がする。たぶん近藤の頭の中では、セーラー服着た総悟とか、猫耳つけた総悟とかの原色の妄想が繰り広げられているのだろう。
「こんの変態が〜!!!いてててててっ!!!」
 叫ぶと痛い!!!
「とにかく、こっちは怪我人なんだっ!!!!寝るから出てけっ!!!いててっ」
 と叫んだ。はいはい、と浪人連中がぞろぞろと出て行く。
「総悟、こっちおいで」
 と近藤が呼ぶ。総悟はぼーっと、近藤を見た後、なぜか、もそもそと俺の布団に入ってきた。
「総悟ちゃん!!!寝るなら、そんな手の早い獣みたいな奴のじゃなくて、俺の布団にしなさい!!!」
 と近藤が嫉妬して半泣きになりながら叫ぶ。
「誰が獣じゃ!!!こんなじゃりガキのしかも野郎に手出すか!!!変態が!!!」
「ちくしょ〜っ!!!総悟ちゃんまでトシに取られた〜!!!」
「取ってねーよ!!!」
 総悟は俺達の騒ぎを無視して、コテンと布団に横になり、もうクークー寝ている。
「そいつ、寝ないで、トシを見てたのよ。総悟には関係ねぇって何度も言ったんだけどな」
 やれやれと近藤が呟く。
「仕方ねぇ。いくら総悟ちゃんがかわいいからって、手出すなよ、トシ。今日だけは総悟ちゃんをお前に預けてやるけど、明日からはこうはいかないからな〜!!!!」
 と激昂気味に言い残して、近藤が襖の向こうに消える。
「だから、俺はお前と違って変態じゃねぇっつーの!!!」
 と言い返した。